「第1回NAPROCK 産学連携シンポジウム」
開催:平成21年8 月28 日
場所:長野市生涯学習センター
特定非営利活動(NPO)法人高専プロコン交流育成協会(NAPROCK・堀内征治理事長)は8月28 日、情報産業界で活躍する会員企業をパネリストに招き、“情報産業界で働く楽しみを知る”をテーマに、「第1回NAPROCK産学連携シンポジウム」を長野県長野市で開催した。
プロコン運営のほか、高専と情報産業界との連携・交流事業などを通して、IT を学ぶ若者の育成推進を図り、高度情報化社会の発展に寄与することを目指している。
今回のシンポジウムは、この取り組みの一環として開催した。同シンポジウムは、全国の高等専門学校の教職員による、情報処理教育の手法などに関する研究発表会「情報処理教育研究発表会」開催にあわせて同じ会場で催され、学生の指導にあたる多くの教職員約140名が参加した。
◆『刺激』 『達成感』 そして『喜び』
シンポジウムは、冒頭に司会の桑原理事より、 「昨今、高等教育機関において、情報系の勉強に対する意欲を持つ学生・生徒が少なくなってきているといわれる。基幹産業のひとつである情報系の産業にとって、これは大きな問題。情報産業の仕事に対し、3K などとささやかれることもある。今日は、パネリストの方々に、こういう間違った認識を払拭してもらうようなお話を伺いたい」との話から始まった。
「我々は、自分たちで新しいアイディアを考えながら、ソフトウェアを作っている。その、何もないところから新しいものを生み出す、そしてそれを沢山の人達に使っていただき、ソフトウェアの恩恵を受けていただく、このことにスタッフは喜びを感じているし、学生の皆さんにもそこに楽しさを見つけていただければと思う」(オプティム・古賀氏)
「自分の興味ある分野、好きな分野に深くかかわりを持てることがやりがいに通じるし、その過程でいろんな人とコミュニケーションをとって、生の声を聞きながら仕事ができる喜び、そういうところが面白い。プロジェクトに対してチームで協力してゴールに向かう過程、プロセスを非常に楽しんでいる」(トヨタコミュニケーションシステム・田中氏)
「プロジェクトで行うシステム開発では、テーマが持ち上がったときに各方面から様々なプロフェッショナルが集まり、1つの仕事をやり遂げていく。その期間が過ぎると、それぞれがまた新しい仕事に取り組む。その期間の人と人との触れ合いが、達成感に繋がる。そしてその後、2、3年後にはなるが、我々が作ったシステムが社会に根付いた、と感じることが出来たとき、更なるモチベーションが生まれる。」(ネクストウェア・川崎氏)
「我が社の企業理念は、『感謝と喜び』。この必ずしも景気のよくない経済環境の中、資金を投じていただくユーザーの皆様には、我々が提案するシステムに対して、特に利益やメリットについて厳しく見られる。そういう中で我々がチームを作り、パッケージを製作・提供し、FE(フィールドエンジニア)がサポートをすることで、こんなに楽になった、こんなに利益が出た、と喜んでいただける。我々のシステムを使っていただくことへ感謝するとともに、そのお客様の喜びが我々の喜びに繋がっている」(ブロードリーフ・中西氏)
「IT 業界の特徴は何かと考えると、大きく2つあると思う。一つ目は、“世界が非常に近い”という点。何もないところから自力で作り上げたものが、世界に直結するまでの距離というものが、ほかの業界に比べて圧倒的に短い。良いものを作れば、あっという間に日本中、世界中に広がっていく。もう一点は、“技術の進化が非常に早い”こと。毎年毎年新しいものが出てきて、働いている立場としては非常に刺激を受けることができる」(マイクロソフト・田中氏)
パネリストの皆さん(50音順) ●株式会社オプティム
取締役
テックグループディレクター
古賀 一彦氏
●株式会社トヨタコミュニケーションシステム
ビジネスシステム本部部長
田中 一紀氏
●ネクストウェア株式会社
取締役
川崎 裕二氏
●株式会社ブロードリーフ
企画部
中西 巧氏
●マイクロソフト株式会社 開発ツール製品部
エグゼクティブマネージャー
田中 達彦氏
◆“仕事”と“自分の時間”のメリハリをつけること
また、シンポジウムでは、パネリストに対する質問の時間が設けられ、会場からIT 産業で働く人の適性や勤務時間についての質問が寄せられた。-情報系の企業に就職するにあたり、こういうタイプの学生が結果的に向いていた、ということはあるか?
「私も採用面接に携わっているが、実際入ってから頑張っているメンバーというのは、やはりソフトウェアを作るのが好きな人。面接の時にも『休みの日にプログラムを作ってますか?』とよく訊ねるが、プライベートの時間を削ってでもそういうプログラム作成をやろうとするメンバーは向いている」(オプティム・古賀氏)
「“人の気持ちが判る”ことが重要だと思う。ソフトウェアを作るというと、コンピュータに向かって、パシャパシャ打っているというイメージがあるが、作ったソフトウェアは誰かが使っているわけで、その使っている人の気持ちを汲みながらプログラムを書いていかないと、やはり使いやすいものにはならない。そういうところで、相手の気持ちがわかる人は、企業に入っても伸びていくと思う」(マイクロソフト・田中氏)
「開発系の部署などではよくある制度ではあるが、“ノー残業デー”を月に6回程度導入しており、その日はスッパリ5時半には帰って、家庭サービスなり自分の趣味の時間にあてるなど、そういうことを推奨している。また、先ほどもメリハリのある忙しさ、という話があったが、ソフトウェア開発というものは当然プロジェクト制で、結構一つ一つのプロジェクトが長いため、プロジェクトの仲間内、3人から5人の小規模なグループ内でやりくりをして、休みを取れるようにしている」(ブロードリーフ・中西氏)
◆多くの人と知り合うきっかけになったプロコン
この質問の時間の中で、舞鶴高専のOB であり、かつて高専プロコンで活躍した経験を持つブロードリーフの中西氏に、NAPROCK の伊原理事より「自慢話をして欲しい」と指名があり、中西氏が当時のプロコン参加について語る一幕もあった。「私は舞鶴高専出身で、高専時代に第3回のプロコン(1992 年の仙台大会)に、1年生のときに他のメンバーと一緒に出場し、その年は舞鶴高専の先輩方のチームが最優秀賞を獲得した。翌年以降は、2年生・3年生の時に大体同じようなメンバーで出場、最優秀賞を2回連続でいただいた。4年生・5年生の時にも引き続いて本選に出場し、5年の時に優秀賞をいただいた」「4年生の時、第6回函館大会(1995年)の話だが、当時、翼システム株式会社(ブロードリーフの前身)がプロコンのスポンサーで入っていて、そこで“面白いソフトを作っている奴がいるようだ”ということで声を掛けてもらい、入社した経緯がある。私にとってプロコンは、まさに就職に結びついた場であったほか、色々な方々と知り合うきっかけとなった価値のあるものだった」
水を向けられた中西氏はこのように語り、自身がIT 産業界に入るきっかけとなったプロコン、そしてプロコンに参加する学生へのエールを送った。